コスト削減は、どの企業にとっても恒常的なテーマであり、おそらく貴社にとっても同様でしょう。必要以上のコストをかけないようにするにはどうすればよいか、あるいはソフトウェアベンダーに支払っているコストを削減するにはどうすればよいか、いずれにしても目的は同じで、コストを削減することにあります。この記事では、SAPライセンスでコストを削減する最も一般的な方法のいくつかについての洞察をご紹介します。
余剰ライセンスの交換
SAP社 は、あらかじめ定められた一定の期間中、エンドユーザーが未使用のライセンスを追加料金なしで新しいライセンスと交換することを認めています。ただし、これが可能なのは、お客様の契約にこの(交換)権利を認める条項が含まれている場合のみです。
不要ライセンスの解約
組織のニーズを評価した結果、特定のライセンスが未使用であり、今後も使用されないと判断した場合、それらのライセンスを解約することができます。一度支払ったライセンス費は戻ってきませんが、それに対応するメンテナンスやサポートの費用を支払わなくて済むようになるので、コスト削減につながります。
メンテナンスとサポートのキャンセル
ソフトウェアを使用する必要があるものの、サポートは必要ないと考えている場合は、サポートを解約することでコストを大幅に削減することができます(サポートとメンテナンスの平均的なコストは、ライセンスコストの20%です)。ただし、SAP社の一般的な方針として、お客様の所有するすべてのライセンスが同じレベルのサポートを受けるべきである、としているということに留意する必要があります。したがって、SAP社は、お客様の契約にサポートの部分的な解約を認める条項がある場合のみ、それを認めています。
より安価なサポートタイプへの変更
SAP 社は、価格面でもベネフィット面でも異なるタイプのサポートプランを提供しています。SAP Enterprise Support には、アプリケーションの保守や継続的な改善・革新(新しいソフトウェアのリリースやサポートパッケージなど)に加え、SAP のエキスパートとのコラボレーションやミッションクリティカルなサポート(インシデント処理や是正措置計画の提案などのサービスレベルアグリーメントを含む)が含まれます。また、SAP Enterprise Supportには、ビジネスプロセスの最適化、プロセスの文書化、カスタムコードの管理など、SAP Solution Managerの利用権が強化されています。一方、「SAP Standardサポート」には、Enterprise版と同様に、アプリケーションの保守や継続的な改善・改革などが含まれますが、基本的なサポートサービスのみとなります。現在、Enterpriseサポート(ネットライセンス料の22%)を利用しているものの、実際には提供されるすべてのサービスを必要としていない場合は、より安価なStandardサポート(リストライセンス料の19%)へ切り替えることができます。
適切な指定ユーザー(Named User)の選択
SAP社 は、Professional User、Limited Professional User、Employee など、さまざまな指定ユーザー(Named User)ライセンスを提供しています。ライセンスのコストは、付与される権限によって決まります。企業はProfessional Userライセンスのような高価なライセンスを購入し個人に割り当てますが、割り当てたその個人はLimited ProfessionalやEmployeeのようなオペレーション系の機能しか使用しないケースが多くみられます。
ソフトウェアの使用状況と割り当てられたライセンスを比較し、重複ユーザーを削除し必要以上に高いライセンスをクリーンアップすることで、ユーザーを最適化し、既存のユーザーをより安価なライセンスタイプに再分類することができます。
注:SAP社はLimited Professionalユーザータイプを価格表から削除しましたが、2015年8月以前にLimited Professionalユーザーライセンスを既にお持ちのお客様は、SAP社のポリシーに従ってさらに追加でLimited Professionalライセンスを購入することができます。
SAPライセンスコストの効果的な管理によるコンプライアンスの維持
当たり前のように思えるかもしれませんが、コンプライアンス違反は高いコストがかかります。コンプライアンス違反が発覚した場合、既存のライセンス権限に加えて追加で使用したライセンスを定価で支払うだけでなく、超過使用期間または標準で2年間のメンテナンス料やサブスクリプション料(バックデートサポート)、さらにはSAP社が実施した監査の結果によって決定された追加料金を支払うことになります。これは間違いなく大きなコストにつながります。より良い調達方法を実施し、SAPライセンスをより効果的に管理することで、これらのコストを回避することができます。
コンプライアンス状態の把握
自己監査にはコストがかかりますが、SAP社による監査後に発生する可能性のあるコストに比べれば、そのコストは少なく済むかもしれません。SAP社のお客様がライセンスギャップを認識し、必要なライセンスを購入するためにSAP社に直接アプローチした場合、SAP社のポリシーとして、SAP社のお客様が不足分について正直に報告することを奨励するために、たとえコンプライアンス違反が意図しないものであったとしても、割引を認めることになっています。また、意図的でない使用に対しても、お客様がその使用を可能な限り早くSAP社に開示すれば、バックデートサポートは請求されません。
結論
コストを削減・節約できるかどうかは、組織がSAP社と結んでいる契約に大きく左右されます。上述したシナリオの中には、契約締結時に想定されていなかった場合には不可能なものもありますが、専門家のアドバイスを受ければ解決策を見出すことができます。ライセンスコストを削減したいと考えている既存のSAPのお客様にとっての最初のステップは、ライセンスが過剰か不足かを確認することです。